トツゲキ人生「人間」

大きな障害を乗り越えて安心したのも束の間、安堵感から体調を崩してしまった。幸いにして熱は無かったものの風邪のような、アレルギーのような症状がしばらく続いた。期節の変わり目でもあったので毎年恒例の体調不良と軽く考えていたが結構、治るのに時間も掛かったので少し不安になった。健康にも気を遣わないといけない、と反省した一幕だ。比較的、マシにもなった丁度その時、手元にある1枚のハガキが届いた。それは人間ドックのお知らせだった。何の気にも留める事無く2、3週間デスクの上に放置、やはり気になる気持ちは拭えなかった。特に何処が悪いとかは無かったものの自分の今の事、将来の事を考える良いキッカケとなっていた。良い機会だから自分の健康を見直してみようか、と考え一念発起。そのハガキを機に人間ドックを受ける事にした。

人間ドックぐらいで大袈裟になる必要も無かったのだが何かにつけて、初めて、というのは緊張するものだ。予約をするべく病院へ連絡。そこで結構驚いた。実のところ予約状況が向こう1、2ヶ月は満員。スグに予約出来ない、というものだった。考えが甘かった。むしろ焦った。自分の知らないところで、こんなにも健康に気を遣う人達がいる、と知ったからだ。正しく衝撃的だった。人間ドックはそんなにメジャーなものなのか、と心の中で一人呟いていた。こうなったら居ても立ってもいられない。とにかく必至で懇願し1、2週間後に何とか予約を確保し事無きを得た。前日21時からは何も食べないで下さい!、当日来院する折はこの薬を飲んで下さい!、という2つの簡単な説明を受けて電話を後にした。それから3、4日程度でして病院からシラバスが届いた。ミスター小心者はコレだけでは終わらない。届くや否や即開封。人間ドックでは主に何をするのか?!、についてを徹底的に調べまくった。苦しくは無いのか?!、痛く無いのか?!、発狂してチンプンカンプンにならないのか?!、という各所様々な内容を無意識に調べまくっていた。そんな感じで内容物を一様に分析し、当日に向けての段取りを必死で完了させた。

日に日に近付いてくる人間ドック。そして2、3週間は早いもので人間ドック前日。21時からは200%飲まず食わず。もう本当に水しか飲んでいなかった。緊張に緊張が重なり夜も眠れずにいたので結局、仕事をしまくって朝を迎えた。人間ドックの日に徹夜である。何て不健康なんだ。とりあえず飲むように言われていた薬を朝ご飯感覚で飲み干す。無論、お腹が満腹になるはずもない。いろんな意味で落ち着かないので足早に車に乗り込み20分のドライブ。早々に病院へ到着し、受付を済ませて待合室にて待機。当日は自分を入れて4名の予約が入っているらしく、検査の順序がアベコベになる可能性がある、という事を示唆頂いた。そんな事は今の自分にとってどうでも良かった。実のところ内視鏡検査の存在がすこぶる大きかったからだ。例え、鼻から入れる、と言っても苦しいものは苦しいはずだ。声を大きくしても心の声は聞こえないだろう、とばかりに声を大にして心の中で叫んでいた。

内視鏡検査だけはどうか後回しに下さいますように!!、と心の底から懇願していたが健闘虚しく採血と尿検査の後スグに内視鏡検査が決まった。よりにも寄って25%の確率を引き入れてしまったのだ。こういう時、決まって分が悪いミスター小心者。私よりも先に受付を済ませたミスターチキンが、内視鏡検査を後回しにして欲しい、という要望を出し病院サイドはそれを快く聞き入れたからのようだ。もう何でやねん?!、というミスター小心者の心の声は聞き入れられる事もなく、淡々と採血と尿検査を済ませ、いよいよ内視鏡検査が開始された。検査室に通され横になる。そしてパッと見て目をそらす。生々しいぶっといラインを見付けたのだからミスター小心者には致し方ない。とりあえず無造作に横になったまま説明を聞き、言われるがままに薬を2度吸い込む。嘔吐かないようにする薬らしい。大丈夫な方は内視鏡を入れたまま喋れる、というが喋れる訳がない。そんな気の遠くなるような会話をしていると先生が登場。苦しく無いような姿勢やら呼吸やらをレクチャー頂きながら、いよいよ内視鏡に手を添える。目を閉じると恐いので目を開けたままで入れてもらうことにした。入っていく感覚がある。胃に空気を入れられるとゲップをしてしまいそうになるが耐えられる。それに自分の胃を画像でチェックしながら先生とも喋られる。これにはさすがの私も感動だった。想像していたよりも大丈夫なのだ。内視鏡を入れる時は必ずと言って良い程、鼻から入れる事をオススメしたい。これで何ら問題も無く内視鏡検査は終了した。

後はCT、MRIへと順調に検査は続いて全ての検査が終了した。内視鏡後の検査は正直言って余裕だった。気が付けば早いもので既にお昼前。検査結果が出るまで控え室で待機していると、お昼ご飯を用意してくれた。栄養士さんが作ったボリューム満点の健康食らしく、闘いの後の食事は格別に美味かった。お昼ご飯を食べ終わるとタイミングを見図ったようにスグ、担当の方が呼びに来てくれた。検査結果が出たようだ。診察室に通され先生からの診断が始まった。「お酒は飲みますか?」、もちろん飲まない部類。「タバコは吸いますか?」、120%吸わない。「コーヒーは?」、多いときで1日3杯程度。そして最後に、健康優良児だね!!、という言葉。その言葉にもう本当に安堵した。これからは年に1、2回の健康診断と3年に1回の人間ドックぐらいを考えて日々の生活に健康という二文字を刻んでいくことにした。