トツゲキ人生「機転」

仕事以外の膨大な時間と少なくなったチラシだけがあった。仕事の時間よりも空いている時間の方が多かったので子供の手前、朝から家を出ては歩く歩く歩くだけをやっていた。とりあえず少ないチラシを片手に周囲を見渡しながらダラダラと夜遅くまで配っていた。全てのチラシのポストインも終えて。いよいよ途方も暮れて公園のベンチに座ってボーーーッしていた時のことだった。ポストインを終えた最後の家の門扉あたりに分厚い本のようなモノがあることに気が付いた。

「あれ何や!?、あぁ〜タウンページかぁ〜!???、あんな門扉のところに置いてんねんなぁ〜〜〜ッ!?・・・・・・・・タウンページ!?、アッそうか☆」

寝転んでいたのですが気が付いた時には即行、飛び起きてました。時期も時期だったようで電話帳の入れ替えだった。気が付いた時には既に夕方を過ぎて夜遅くにもなっていたので帰宅して早寝早起き。タウンページに広告を出す、ということを思いついて朝早く早々にNTTタウンページへ問い合わせた。けれども話がグルグル回るだけで、お目当ての内容が掴めない。ビジネス社会慣れ、社会人慣れをしていなかったのがバレバレだったようだ。A→B→C→D→A・・・というような流れのタライ回し。普通ならば憤り満々。けれどもそんなコト言うてられない。自分が欲しい情報を得る為に至るところから至る角度で発信していく。怒濤のように発信していく。手に入るまでは決して諦めない。相手がNTTだろうと何だろうと欲しい情報は欲しいのだ。追い込み過ぎたのか、どうかは不明だが挙げ句の果てに先方からは「その担当者は今日辞めた。」という始末。そこまでして話がしたくないのか!?、、、

それでも絶対に諦めなかった。そんなヤリトリを3、4日程しまくって、ようやく話を聞いてくれた。ただ怒濤のような勢いもありギクシャク極まりなかったが、欲しい情報は得られた。9月から10月に掛けての時期は、古いタウンページと新しいタウンページの入れ替え時期なようで、来年度申込は翌年1月ないしは2月ぐらいになるらしい。とりあえず連絡を入れてくれるようなので、思いっきり期待して数ヶ月を凌ぐことにした。けれども、よくよく考えた。申込が1月ないしは2月で入れ替えが9月10月ってことは、1年も待たなければならない、というコトだ。10月も初旬ともなると残された時間は、後5ケ月をきっている。持ち直さなくてはならん。チラシに与えられる資金なんて皆無。広告が出来ないにも関わらず空白のタイムラグを乗り越えないといけない、と考えると背筋の凍る思いだ。

どう凌ぐ!?、自分自身に何がある!?、何が出来る!?、とことん考えた。まずは売れるモンを全部、売ることにした。車だろうと服だろうと本だろうと、何だろうと売りまくった。最低限、仕事の出来る身辺だけは整えて後は全て売りまくった。とことんだ。車に至ってはバラバラにしてから売った。車を触る趣味もあったのが幸いした。これで数ヶ月程度も寿命は伸びた。そして次に考えて行動に徹したのが、気持ちが折れそうな程の恥も外聞もない徹底的な節約だ。自分自身の24時間を考えた。睡眠時間を削って日々、疲れを残すような状態にした。体力を節約するコトを考えたためだ。さらに1日2食に徹して、朝ご飯には砂糖や塩を入れただけの水で過ごした。昼ご飯に至っては、ほぼ食べなかった。移動中、喉が渇けば公園の水を飲んだり、頭にパワーが無くなればチョコレートを刻んで食っていた。時折、お客様から頂ける御心遣いには感謝感激を覚えたものです。本当に涙が出る程に、手が震える程の気持ちでした。夕方夜になって腹が減れば頃合いを見ながらコンビニの廃棄弁当をもらっていた。来るべき日のことを考えると恥も外聞もあったものではない。指を指されても冷ややかな目で見られても、とにかく耐えた。例え1食でも私1人分の食い扶持で大きな節約に繋げられるのならば良いという思いだ。もちろんのコトだが妻や子供だけには、そんな思いを決してさせてはいない。さすがに過酷過ぎるからだ。これは私の範疇で行うべきだ。 頭と体が悲鳴をあげそうになりながら時が経つのも早いもので雪が散らつく2月下旬。とうとうNTTから連絡があった。ついにやって来た。<つづく>