日頃からの学習方法:日本史

日本史

第1段階

歴史の流れの骨組みを掴む。学校の授業の予習の段階において、各時代区分ごとに教科書を使用してアウトラインを掴んでおくと、学校の授業で話される内容にしても、その他自主的に教科書を読み進めるうえでも、理解がしやすいうえ効率的に暗記ができる。まずは骨組みを確立させることが重要である。そしてその具体的な方法としては、政権担当者を重大事件や政策とともに暗記してしまうことが有効である。例えば鎌倉時代であれば、前から順に、将軍①源頼朝→将軍② 源頼家→将軍③源実朝→執権②北条義時→執権③北条泰時→執権⑤北条時頼→執権⑧北条時宗→執権⑨北条貞時→内管領長崎高資、といった具合である。将軍の順序などは教科書巻末にも掲載されている。そしてこれに重大事件などを加味して流れを作成する。その際には教科書や資料集 の年表に記載のものを使用してもよい。以下、具体例を示す。

将軍① 源頼朝 征夷大将軍任命、鎌倉幕府を開き、政治の体制を整える。
将軍② 源頼家 頼朝の死後、将軍を世襲。しかし若輩だったゆえ祖父の北条時政ら13人の御家人
が合議制を強制。
周りの御家人に対抗しすぎたため、将軍職を下ろされ、伊豆の修善寺に幽閉の後
暗殺
将軍③ 源実朝 兄頼家暗殺の後将軍を世襲するも政治に興味なく、文化人として生きた。
頼家の子公暁による思い込みの復讐によって暗殺。
執権② 北条義時 源氏の正統が断絶したことを区切りとして、後鳥羽上皇が倒幕の挙兵。
これに幕府が対抗して、上皇軍を破る。(承久の乱)
京都に六波羅探題設置 → 朝廷に影響力
執権③ 北条泰時 父義時の死により、執権を世襲。承久の乱以降の幕府の体制強化
①法典整備 御成敗式目
②合議制を制度化 評定衆
③北条の権限強化 執権補佐の連署を設置
執権⑤ 北条時頼 宝治合戦 飾りの将軍九条頼経と有力御家人三浦泰村の反乱
②北条の権力強化 引付衆設置
執権⑧ 北条時宗 ①得宗先制体制の確立
②元寇
執権⑨ 北条貞時 霜月騒動 有力御家人安達泰盛の排除

第2段階:授業

学校の授業を受ける段階において注意するべきことは以下の2点である。ひとつはとにかく先生の発言内容についてはどれだけ小さいことであってもできる限り記録をしていくこと、そしてもうひとつは学習した事項について理解をしようとすることである。前者については、暗記や理解を行う際の助けになったり、問題を解く上でのヒントになったりもするからである。

例1:「承久の乱の後鳥羽上皇は将軍③源実朝の和歌の師匠であった」という情報
→ 当時の源氏と朝廷の距離が近かった。
→ 将軍が暗殺され、源氏の正統が途絶えると、上皇がこれをきっかけにして幕府を終わらせようとした。おそらく源実朝生前の折は、自分が政治に絡まずに北条家が幕府政治を独占していた様子を上皇に伝えていたはず。
→ 承久の乱が北条義時の時に起こったということ、乱の後六波羅探題を設置して朝廷を見張らせたことなど、時代背景を踏まえてこの辺りの時代の流れについて整理をする際の一助となる。あと源実朝の著書「金槐和歌集」の存在や勅撰和歌集との関係など文化についてもまとめて整理ができる。

例2:「承久の乱の後、執権北条義時は3年以内に亡くなっている」という情報
→ 承久の乱の後始末(3上皇の配流、六波羅探題の設置など)のみ義時の時代に行うも、それに伴って幕府の体制を強化する政策(御成敗式目・連署・評定衆)のように少し時間がかかるものは息子泰時の時代に行うことになった。
→ 誰の時代に何があったか、というよくある問題にきちんと対処できる。

以上のようなちょっとした情報を授業で発言することがよくあるので、その都度メモ書きしておいて復習の際にそれに基づいて整理をするということを心がける。学校の授業を聞く段階において気をつけるべきもう一点は、時代背景などについて理解をすることである。なぜこの事件が起こったのか、なぜこの政策を行ったのか、などについて授業で出てきた情報をもとにして細かく理解をしていく。

第3段階:復習① ノートの作成

復習を行う際にはまず、予習において暗記をしていた骨組みと学校の授業で得た内容を踏まえ、教科書を精読する。この段階においては最初予習の段階で読んだ時とは全く違う理解度で読めるはずである。そしてこの段階で教科書と授業の記録、学校のプリントなどを基にして自分でノートを作成する。ノートの作成自体は色んな方法があるが、おすすめは以下の方法である。
〈ノートの作成〉
① ノートの見開きを使用する。左のページには政権担当者を軸として時系列にまとめる。
② 教科書を精読しながら、重要事項をピックアップしていく。特に学校の授業で指摘された部分や教科書の記述で太文字になっている部分は重要事項なので、必ず簡単な説明と共に書き込む
③ ②が終了した段階でひとまずは終了、右のページは空けておく。
④ ノートを見返して分からないキーワードがあったら、用語集や資料集などで調べる。その際に得た付加的な情報についてはその都度右のページに入れていく。視覚的なイメージを補うために資料集の図や写真などを自由に書き込む。左ページは簡単に、右ページは詳細に。
⑤ その後問題集によって問題練習を行った際によく間違える部分や苦手な箇所について右のページに書き込んでいく。
⑥ ノートを随時見返して復習する。

第4段階:復習② 知識のインプット

ノートを作成した段階でだいぶ知識の整理ができているはずなので、次の段階としてはそのノートに記載された内容を基に、反復して復習することで知識をインプットしていく。暗記を行う際には、全体的に大まかな理解から、部分的な理解へとつなげる形で行う。例えば、まず鎌倉時代は①源氏のよる武力支配の時代 → 承久の乱 → ②北条氏による支配体制の確立(北条氏の権力強化・他氏排除) → ③ 得宗先制体制(北条氏嫡流による支配) → 北条氏への不満 → ④ 御内人(北条氏の家臣)の台頭・御家人との対立 → 御家人の不満爆発 → 倒幕 などのように大まかに分類できることを理解したうえで、各①、②、③、④においてそれぞれ誰が政権を担当し、何があったかを確認する。この場合だと、①源頼朝〜源実朝 ②北条義時〜北条時頼 ③ 北条時宗・北条貞時
④ 長崎高資 といった具合である。そしてその次に各①、②、③、④において起こった事件や政策について詳しく検討していく。承久の乱が起こった背景、誰が、誰に対して、何をしたか、そしてその結果どうなったか、をきちんと把握して暗記を行う。その際に気付いた内容や、新たに得た知識についても随時ノートに加えてゆく。目標は何も無い状態で、自分が作成したノートを復元できるレベルである。

第5段階:復習③ 知識の定着

問題集を使用してアウトプットを行う中で知識を定着させていく。ここでは目的に応じて問題集を使い分ける。まず学校の定期考査のレベルについては山川の一問一答を使ってどんどん知識を暗記していく。教科書精読、ノート作成、復習を行った段階なので、大部分はすでに覚えているはずなので、ここでは重要事項に漏れがないように網羅することが目標である。またこの際にはきちんと手を動かして覚えていくことが重要である。特に文系学部の入試ではまだまだ名前を書かされることがよくあるので、この段階から何度も書いて覚えることが重要である。次に入試の基礎として時代別に編纂されている問題集を使用して問題練習を行う。そしてその中で得た知識についても順序ノートに記載し、復習の対象に入れてゆく。また日本史の問題はなんらかの資料から抜粋した長文を基にしているので、問題を解く中で新しい発見がある。それについても順序ノートに加えて、復習の対象とする。センター試験の過去問については、時代区分がひとつ済んだ段階で取り組む。センター試験における問題の配列は今のところ、第1問 全体的な内容、第2問 古代、第3問 中世、第4問 近世、第5問 近代、という形に分かれているので、古代の学習が済んだ 段階で第2問の学習、中世が済んだ段階で第3問の学習、という形で進めていく。

第6段階:論述対策

東大・京大・一橋大など一部の大学では100字以上の論述問題が出題されるし、私立大学においても20字〜30字程度の記述問題がよく出題される。論述問題については、過去問や問題集を解いていく中で典型的なパターンを身につけていくことが中心となる。問題をまず解いてみて、解答 と自分の答案を比較する。その際に足りないものについて検討し、補うことによって自分の答案を正解に近づける努力を行う。一般的には、要点を網羅しきれずに何かが抜けているということが多いので、自分の答案に漏れがあれば、その都度その旨をノートに記載して復習の対象にしてゆく。論述用の問題集を解くと、自分の知らなかった内容や視点に出会うことが多いので、ただ解き方を覚えるのではなく理解を深めることを目的として取り組むことが有効な対策となる。ここまでの段階ではノートの情報量はかなりのものになっているはずなので、次にノートの再現を何も参照しない状態でできるというレベルまで覚えこむ。ノートを紛失しても全く困らない、というレベルを理想として復習を行う。教科書太字のキーワードについて何も参照をせずに正確に説明ができるというレベルになると、だいたいどんなテーマが出題されても書ける。

nihon