トツゲキ人生「印鑑」

司法書士西村先生に提出する為の書類群を即翌対応で整えて、税理士渡部先生にも様々なアドバイスを賜ることが出来た。いよいよ後残す段取りは、印鑑の仕上がり、を待つばかりとなった。印鑑屋さんからは、週末土日で仕上げます!、というコトを聞いていたので火曜日午前中に取りに伺うコトを約束していた。とても順調だ。自分1人の力では、こうもスムーズに段取り良く進んでいなかっただろう。

いよいよ約束の火曜日。午前中には弁護士兵頭先生との打ち合わせ、午後からは司法書士西村先生との打ち合わせがそれぞれ設定されていたので、月曜日夜から緊張しっ放しであった。早朝、印鑑屋さんの開店と同時に、おはようございます!。約束通り、会社印、認め印、銀行員それぞれを受け取った。一先ずこれで本日打ち合わせの準備物が全て揃ったことになる。念願叶った気分であった。余韻に浸りながらも足早に午前中打ち合わせに赴いた。弁護士兵頭先生との打ち合わせでは、法人化に伴う就業関連の様々なことを勉強させて頂いた。労働基準法の奥深さを痛感し、自分が今まで創ってきた環境を一掃。新しい就業形態を見出だすことが出来た。刻一刻と法人化への準備が整っている、と肌身で実感していた。私の頭もパンパンとなったとこで、午前中の打ち合わせが完了。一旦、昼休憩を挟んで次なる打ち合わせに備えることにした。

次なる打ち合わせ場所でもある商工会議所には、定刻15分前に到着した。駐車場に車を停めて落ち着こうとしたが、やはり落ち着かない。とりあえず居ても立ってもいられないので時計を5分進めて、本日はこの通りに行動するぞ!、と心に決めて5分前にノック。心臓バクバクで何とも言えない緊張感が自分の頭と心の中で行ったり来たり。緊張からか、辿々しいご挨拶となり着席した。先生に幾つか勉強させて頂きながら、何枚にも及ぶ書類群に押印していく。初めて見るモノばかりで圧倒されながらも、押印はどんどん進んでいく。こんな光景を後どのくらい目の当たりにするのだろうか?!、という自問自答しながらも押印は最終局面に入っていった。そして全ての書類に押印が完了し、再び1枚1枚丁寧に書類を確認していた時、目を疑うようなハプニングが起きた。印鑑に彫ってある社名のスペルが間違っていたのだ。確かに印鑑を受け取りの際に確認し損ねていた自分が存在していた。それが先生の前で、とんだ赤っ恥をかいてしまう、という事態を招いたのだ。同時に腹の中で何かが煮え滾る感情が沸々と湧いていた。とは言え、顔に出してはいけない。とにかく取り繕うしかなかった。沈黙と焦りが先生のオフィスに張り巡らされていた。とにかく印鑑押印はまた後日改めて行うコトとなり、先生の段取りを乱してしまった申し訳無さ、と自分への不甲斐無さがスクランブルされた何とも言えない気持ちとなっていた。

先生のオフィスを後にして、印鑑屋さんへスピードで跳んで行った。印鑑の字が間違っているので直ちに直して下さい!、という物静かな一言。ただそれ以外の言葉は何も出てこなかった。烈火のような鬼の形相というよりも落胆した冷やかな表情だったに違いない。雨降って地固まる、という言葉を心の中で何度も、何度も呪文のように唱えていたコトを今でも覚えている。印鑑屋さんからは、今まで数万本以上を彫って来てこんなコトは初めてだ!、という言葉。この言葉を耳にした途端、何処と無く穏やかな気持ちが戻り、明るい光を感じた。とりあえず時間を掛けて丁寧に直して下さい!、と軽い面持ちで告げ、全てを許すことにした。何万本の中の1本になったのだから、改善出来るハプニングならば善くも悪くもポジティブに考えるべきだ。