トツゲキ人生「調査」

税務署の職員さんから指示があったまま、税理士の先生から言われるがまま、準備すべき書類群、伝票群を準備することにした。出入りを追跡出来る収支関係、お客様との契約書類関係、銀行ゆうちょの口座関係、社員従業員の在籍関係その他、諸々これら全ての書類群を過去3カ年分が必要だったのだ。キチンとではなかったものの6年も7年も個人事業をしていれば比較的、容易に書類群を集めることは出来た。事業を自分なりに進めて行く中で工夫し、見様見真似であったが自分なりに経理を進めていたこともあり、書類は殺伐としていたものの数字の管理だけは、手の届くところで保存出来ていたのだ。後はとにかく告げられれば直ぐに提示出来るぐらいにしておくだけだった。もう何を言われようと何を突っ込まれようと臨むところである。全部が全部、迎え撃つことは出来ないだろう。とは言え負けてもタダで転ぶワケにはいかない。勝負の鉄則である。さすがにこの時ばかりは覚悟を決めた。逃げるのでは無く、隠すのでは無く、全てを見せて突っ切ろう。明るみになった事実関係で先方より判断を賜り、告げられる事を全て受け入れることにしよう。良くも悪くも、良い機会点に位置しているかもしれない。とは言っても、悶々以外の何物でもないのも当然だ。

いよいよ調査日がやってきた。心臓バクバクである。とにかく喉が乾いて仕方ない。そんな時、税理士の先生が我が基地に到着。迎え入れてお茶の段取りをするや否や、税務署の署員さんも到着。互いに緊張な面持ちでご挨拶も早々に、調査が開始された。どんな事業をやってるんですか?、時間はどのくらい働いてるんですか?、売上は大凡どのくらいですか?、何人ぐらいのスタッフさんがおられるんですか?・・・というフランクな話から始まり、当初想定していたよりも落ち着いた雰囲気で話が進む。印象としては序盤、和やかだ。一様に確認作業も完了すると次は、幾つか証拠のようなモノを目の前に置かれてから、矢のような質問攻めに合う。なに?、なぜ?、なに?、なぜ?、の応酬だ。要するに辻褄が合ってるか否かの問い掛けなのだろう。誤魔化す気持ちは毛頭無かったので、押し問答に対して正直言って動揺はあったが、絶妙なタイミングでの先生の差し込みの御蔭で何となくだが結論へと導くことが出来た。ただ最終結論ではないので油断は出来ない。腹を括っていたこともあり終始、落ち着いて話が出来た。最後の最後に署員さんから、調べたいことがあるから書類を幾つか持ち帰らせて下さい、とのこと。当然の如く、言われるがまま全て持ち帰ってもらうことにした。時間にして、だいたい2時間程度が過ぎていただろう。肝心要な時に決して手元を濁してはならない事を学んだ。

一件落着とは言わないまでも帰り際に先生から一言、「もっとキツイ感じで突っ込んでくると思っていたがそうでもなかったようだ。後は私が窓口になって対応するから和田さんは今の仕事を精一杯やって下さい。大丈夫だよ!!」。。。その一言に感無量。言葉が出ないぐらいに感謝感激でしょうがなかった。先生と一生付き合っていくことを心に決めた瞬間だ。