トツゲキ人生「入園」

無事?に年度末も乗り越えて残すところは、課せられたキャッシュフローの狭間を埋める、という事に没頭するだけとなっていた。息つく間もない状況にも関わらず、愛娘の幼稚園入園が控えていた為、あっちフラフラこっちフラフラと準備に段取にバタバタだった。最大のリスクをギリギリのところで回避出来ていたので、まぁ〜贅沢は言えない。何とか間に合った、という感じだったものの何処と無く安堵感もあった。

バタバタな入園準備も一様に済ませ、いよいよ当日。午前中は入園式に出席し、午後からは思いっきり仕事と決め込んでいた。家庭教師という仕事ならではだろう。不思議と緊張して前夜は4時間ぐらいしか寝れなかったのを今でも覚えている。幼稚園の入園式なんて初めてだし何となくドキドキしていた。変な緊張感だ。右手にカメラとスリッパ。何処か懐かしい光景だ。スーツに身を包んでトボトボと通園路を歩いて行く。園門へ到着するや否や、初めて見る光景に圧倒された。今まで経験した事の無いような微笑ましい光景。あっちもこっちもカメラでパシャパシャ。良いご挨拶で、良い笑顔で園の先生方が迎え入れてくれる。加えて言うなれば、いつの間に友達になったんだ!?、と思ってしまうぐらいに皆が皆共に仲が良い。私の知らないところでも家内は家内なりに悪戦苦闘していたようだ。ちなみに私はそんな感じが大の苦手。恥ずかしいし照れ臭い。元より人生の先輩だらけなので止むを得ないだろう。

そこで、よくよく考えてみると幼稚園入園から高校卒業までの十数年間というママ同士の付き合いも幕を開けた事になる。人間関係は難しいからこそ今のこの瞬間を良い意味で迎える為にも、何かに向けて何かの努力をする必要があるようだ。必死になって情報を集め、差し出すカードを良いタイミングで差し出し、少なくとも大きなリスクの回避に繋がる。そんな事ぐらいで!?、と思われるかもしれないし大袈裟かもしれないが、そのぐらいで考える方が丁度良いようなのだ。実際ご近所さんや幼稚園の同級生さんと上手くいかずにギクシャクしちゃって、せっかく買った家を手放したり、せっかく整った環境を一変させたりしちゃう方もいらっしゃる。余程の事なのだろう。初めて聞いた時、自分の耳を疑った。人間関係、というモノは本当に難しい。ご近所ゾーンに身を置く以上、決して軽々しく思ってはならないのだ。

そうこうしながらも園門でのご挨拶を終え式典会場に赴く。席について一息入れ、そして周りを見渡し驚いた。至る所にハンディカムの三脚、三脚、三脚。異様なムードの場所取り合戦が行われていたようにも思える。テレビや雑誌でしか見た事の無い、聞いた事の無い光景が今、正に自分の目の前にあった。信じられない気持ちになった。ただ気付いた時には既に遅し。心と懐に余裕すら無かった状況で、そこまで気を回すのは困難。しかしながら幸いにして手元には無けなし状態で手に入れたカメラがあったので、何とかそれで最低限のムービーらしいムービーを撮ることに成功した。一先ずタイミングを逃さずに済んだ。まぁ〜でも個人的にはムービーよりも昔っから静止画の方が好きなのだが・・・。とは言っても準備不足の観点で言えば反省すべき点が大いにあるのは間違いない。私にとっては何もかもが初めてな事だらけの式典だった。出席して思ったのだが我が子の式典というモノは、必ず出席しておいた方が良い。それは一生で一度しかないモノだし、自分が今まで経験した事の無い経験を得られる。それは遅かれ早かれ自分自身の成長に大きく繋がるエッセンスと言えるだろう。園門でご挨拶をして、式典に出席して、教室に入って顔合わせをして、全員集合写真を撮影する。これらの一連のプロセスは子供心と親心にケジメをつける良い機会。出席してみて初めて知った。入園したのは、もしかすると自分かもしれない。