トツゲキ人生「接続」

故障した部品の交換を終えて意気揚々と自宅へ戻って早速、パソコンに電源を入れる。すると、どうでしょう。聞き慣れない起動音。久方ぶりな起動音。これがパソコンなのか!?、うぉ〜〜〜っ何だか凄いなぁ〜〜〜っ、と目がパチパチするぐらい感動した。ところがどっこい起動させたもののさすがに何のこっちゃ訳が分からない。学生時代は論文を手書きで書いていたのだから無理もない。パソコンを使っている同級生を横目に知らんぷりを決め込んでいたが、もう逃げられない。ヤルしかないのだ。とりあえずインターネットというモノを使ってみたい。でも何だか足らない気がする。なんじゃ?、何か違う、、、とりあえずサッパリ分からなかったので妻に聞いてみた。恐ろしいまでに私よりもよく知っていた。昔はドスブイを使って仕事をしていたから、ってオイッ!!そんな大切なことは早く言ってくれんとアカンわ、と心の奥底で妻には決して聞こえないように叫んでいた。さすがに妻という生き物には10年以上過ぎる今もビビッている。とにかくインターネットをするには電話回線やらプロバイダとやらに何かをして何かをせなアカンようだ。ああぁぁぁ〜〜〜もうぅ〜〜〜その何かって何!?、そんな気持ちで悶々としていた。挙げ句の果てにキーボードすらマウスすら無い。別に知らなかった訳ではないが、単にそれどころでは無かっただけなのだ。

ここまで来たら諦める訳にはいかんので、とにかく例の親切極まりないNTTタウンページの担当者へ連絡した。鉄の心は20代前半でも健在だ。まったくもって何のことやら、と言わないばかりの対応だ。にも関わらず、回線のことは116に電話して相談してみて下さい、というアドバイス?をもらうことが出来た。その途端、瞬時に電話が切れたのでスグに116に電話した。116の担当者さんはとてつもなく親切だった。ちなみに電話のサービスとタウンページのサービスを提供している会社はそれぞれ別の会社であることを初めて知った。世間知らずのまま次のステップへ移った。ニフティというところへ連絡すれば良い、という情報を得たので早速、電話帳で調べてみたが掲載していない。ううぅ〜〜〜ん、困った。止む無くコンビニへ走った。ニフティが売っている期待をしていた訳ではない。コンビニのお兄ちゃんというのは大概が若いアルバイト。ニフティに繋がる何かを知っていると思ったので飛び込んだ。当てはピンポイントに的中。アプライドへ行けば多分ありますよ、という最強の情報を手に入れたので場所を聞いて即飛びした。パソコン機器ばっかり置いてある電気屋さんみたいな大きいところがあるなんて知らなかった。情報を足で稼ぐ習慣は既にこの時ばかりには身に付いていたようだ。

姫路東から姫路南へ直行!!アプライドをロックオン。やっとのことで辿り着いた。店内に入ってさらに驚いた。全部が全部、パソコン機器なのだ。こんなに大きいところがあるなんて驚きだ。そこで目を引いたのがジャンク品。粗大ゴミよりはマシだろう。ガサガサとガサツに漁っては物色。キーボードとマウスを数百円単位で手に入れた。よし一先ずこれでオッケーだ。次に一番の目的でもあったニフティについて情報を集めることにした。ショップの店員さんに聞いてみようと思ったのだが、そこはさすがにコレまでの経験が活かされている。一先ず話を聞いてくれそうな人を目で追って大きな声でみんなに聞こえるように質問した。

すいません!!どうか教えて下さい。ニフティって何ですか?

比較的大きな声だったので迷惑には違いなかっただろう。けれどもこの手法が知るには一番効果的なのだ。人間は、分からない、という言葉を避ける修正がある。その修正の渦中に埋もれて時間をロスする訳もいかないのだ。一部のショップ店員さんはさすがにニヤニヤと笑っていた。しかし直接的に質問させて頂いた方は、すこぶる丁寧な方だった。ニフティへのエントリーシートをもらったうえに、モデムという物も必要になる、ということを教えてくれた。藁をも縋る思い、を掴んでくれたのだ。人の見る目を養うのは本当に大切なことだと心底、実感した日でもあった。物は変化しないが人は変化するものだ。

即行トンボ返りの末、再びNTTへ連絡した。ただし116の方だ。幸いにしてテンポ良く話が進んだので、また改めて担当者から連絡をします、ということなので夕方からの仕事に備えて仮眠をとろうとしたその瞬間。チリリリリィ〜〜〜ン、と電話がいきなり鳴った。突然の事に多少ドギマギしてしまったが、サッパリ分からないことばかりだ、という事をシッカリ伝えて工事の段取りを予約した。キャンペーン中って事もあったので安心した。加えて無料という言葉には滅法弱かった。そんな訳で申込成立。その成立要件をもってして電話をきってからスグにプロバイダへ連絡した。言われるがままに申込エントリーを済ませて何を話して何を申し込んだのか、ぜんぜん覚えていない。普段は記憶力抜群なのだが苦手な事となると確実に訳が分からなくなってしまう。ただこの時ばかりは、怒濤のような初めてばかり、が頭にフリーズを仕掛けたのだろう。

とりあえず工事日当日には開通出来るように手配が整った。思い返せば、粗大ゴミから拾ってきたボロいパソコンを修理して使えるようにした。そして数百円程度で手に入れたマウスとキーボードも準備が完了。回線工事も無料手配出来たうえにプロバイダ契約にも繋がった。これで大学時代に経験したインターネットの再来を自分の手中に収めることが出来たのだ。当時、パソコンを買うには15万も20万も必要だ、と言われていたパソコンを5000円にも満たない金額で手に入れることが出来た。それにも増して、多大な知識や人脈そして人の温もりを手に入れるコトも出来た。費用を節約出来た、という喜びよりも遥かに大きな喜びを感じた。この感覚を大切にしなければならい。今後、心底困っている人がいれば絶対に助けてやらんとアカンmという気持ちになった。何事も決め付けて行動に徹してはチャンスを見出せないまま本来成功出来た可能性の芽を摘んでしまう、ということを身を以て学んだ。

1ケ月後が過ぎて日差しも強くなってきた7月初旬。いよいよ回線工事の日がやってきた。夏も間近になっていたこともあり、既存のお客様より科目の追加や受験の準備による依頼、そしてお客様のご紹介を幸いにさせて頂いていた。ただ新規のお客様は半年以上も音沙汰が無い。何とか生きていくだけの最低限の生活が整っていたが、これで安心してはならない。単なる短期的な処置でしかないからだ。根本的な問題を解決するまでは決して甘んじてはならない。肝に銘じていた。ようやく工事も終わったので、工事の方に確認の為、少しだけ待ってもらうコトにした。パソコンの電源を入れていよいよ起動が開始。マウスも動くしキーボードも動く。そこでドサクサに紛れて、どうやればインターネットに繋がるんですかねぇ〜っ?、と尋ねてみた。その場の空気を察してくれたのか簡単に教えてもらえた。一先ず言われるがままにハラハラドキドキしながらインターネットエクスプローラーをクリックしてみた。

・・・何も映らない。

心身共に静かな衝撃が走った。いろいろなモノが頭の中でトライ&エラーを繰り返す。間髪入れずスグに工事担当者さんがアドバイスをくれた。それは、接続の設定をしないといけない、ということだ。正に目から鱗だ。知らないことのオンパレード。さすがにアナログ頭からするとコンセントを繋いでスイッチを押せば全部出来ると思ってしまっている。頭の中では既に次なる課題と闘う準備が出来ていた。負けてなるものか!?、という気持ちが芽生えた瞬間だ。<つづく>